段ボールは、段ボールでできている? -リサイクルと製造工程ー
<目次>
目次[非表示]
- 1.段ボールの世界へようこそ
- 2.段ボールの原材料である原紙とは?
- 3.段ボールのリサイクルの現状
- 4.リサイクルできない段ボールとは?
- 4.1.汚れた段ボール❌
- 4.2.コーティングされた段ボール❌
- 4.3.金属やプラスチックが付いている段ボール❌
- 5.リサイクルマークの意味
- 6.段ボールリサイクルのメリット
- 7.段ボールができるまでの主な工程
- 7.1.古紙の回収・選別
- 7.2.パルプ化
- 7.3.抄紙(しょうし)工程
- 7.4.段ボール原紙の加工
- 7.5.段ボールシートの加工
- 8.まとめ
段ボールの世界へようこそ
「段ボールは、段ボールでできている」——この言葉に、あなたは驚きましたか?
実は段ボールは、使用済みの段ボールを原料として、再び段ボールに生まれ変わることができる、非常に優れたリサイクル素材です。日本ではその回収率が95%以上と非常に高く、世界的にもトップクラスの水準を誇ります。
この高いリサイクル率により、段ボールは環境負荷の少ない包装資材として、物流や小売、製造業など幅広い分野で活用されています。
段ボールの原材料である原紙とは?
段ボール原紙は、主に古紙(使用済み段ボールなど)を原料として作られます。古紙は水で溶かして繊維状に戻し、異物を取り除いた後、再び紙として成形されます。
必要に応じて、バージンパルプ(新しい木材から作られた繊維)を加えることで、強度や品質を補強することもあります。
段ボールの原紙は、主に次の2種類の紙に分類されます。
ライナー
段ボールの表面と裏面に使用される紙で、強度と印刷適性が求められます。製品の保護だけでなく、印刷による情報伝達やブランディングの役割も担います。
中芯(なかしん)
段ボールの内部にある波型(フルート)部分に使用される紙で、衝撃吸収性や緩衝性が重要です。荷物を守るクッションの役割を果たします。
段ボールのリサイクルの現状
日本では、段ボールの回収率が95%以上と非常に高く、使用済みの段ボールのほとんどがリサイクルに回されています。この高い回収率を支えているのは、いくつかの要因です。
まず、家庭や企業における分別意識の高さが挙げられます。日本では、リサイクルに対する教育や啓発活動が長年にわたって行われており、多くの人が段ボールを「資源」として正しく分別・排出しています。
次に、自治体や業界団体による回収体制の整備も大きな役割を果たしています。定期的な資源ごみの回収や、事業所向けの古紙回収サービスなど、効率的な回収インフラが全国的に整備されています。
さらに、段ボールそのものがリサイクルしやすい素材であることも重要なポイントです。段ボールは基本的に紙だけで構成されており、異物が少なく、繊維として再利用しやすいため、リサイクル工程に適しています。
こうした複数の要素が組み合わさることで、日本の段ボールリサイクルは世界的にも高い水準を維持しており、持続可能な社会の実現に大きく貢献しています。
リサイクルできない段ボールとは?
段ボールは非常にリサイクルしやすい素材ですが、すべての段ボールが再利用できるわけではありません。リサイクル工程において、処理が難しいとされる段ボールには、いくつかの特徴があります。
汚れた段ボール❌
油や食品などが付着した段ボールは、紙の繊維に汚れが染み込んだり、臭いが残ったりすることがあります。そのため、再生紙としての品質が著しく低下し、リサイクルには適しません。
コーティングされた段ボール❌
防水加工やフィルムが貼られている段ボールは、紙以外の素材が混在しているため、通常のリサイクル工程では分離ができません。
金属やプラスチックが付いている段ボール❌
ホチキスの針、プラスチック製の取っ手、金属製の補強材などが付いている段ボールは、異物として扱われ、リサイクル工程で除去される必要があります。これらの異物が混入すると、製紙機械の故障や品質不良の原因になるため、リサイクル対象から外されることが多いです。
このような段ボールは、リサイクル工場で異物として選別されるか、やむを得ず焼却処理されることがあります。
リサイクル率をさらに高めるためには、使用後の段ボールをできるだけ清潔に保ち、異物を取り除いてから排出することが重要です。
リサイクルマークの意味
段ボールには、「段ボールのリサイクルマーク」が印刷されている事があります。このマークには、以下のような意味があります。
このマークは、該当する段ボールが「段ボールとしての回収・再生が推奨されている製品」であることを示しています。つまり、リサイクルの対象として適切であることを表しており、分別・回収の際の目印になります。
このようなマークが表示されていることで、消費者や企業は安心して分別・回収に協力することができ、リサイクルの促進につながります。また、製造側にとっても、環境配慮型の製品であることを示す一つの証となります。
段ボールリサイクルのメリット
環境負荷の低減
段ボールをリサイクルすることで、新たに木材を伐採する必要が減り、森林資源の保護につながります。また、環境配慮型企業としての評価向上といったメリットも期待できます。
資源の有効活用
使用済み段ボールを再利用することで、廃棄物の量を減らし、限りある資源を有効に活用できます。焼却や埋立処分に比べて、環境への負担が少なく、循環型社会の実現に寄与します。
段ボールができるまでの主な工程
古紙の回収・選別
使用済みの段ボールなどを回収し、印刷物や汚れた紙、異物などを取り除いて選別します。
パルプ化
パルパーと呼ばれる大きなミキサーで、選別された古紙を水と混ぜて繊維状にほぐし、再生パルプを作ります。
抄紙(しょうし)工程
抄紙機と呼ばれる紙を連続で抄く機械で、再生パルプを使って、段ボールの原紙(ライナーや中芯)を製造します。
段ボール原紙の加工
コルゲータと呼ばれる機械を使って、ライナーと中芯を貼り合わせて、波型構造を持つ段ボールシートを作ります。
段ボールシートの加工
製函機を使い、段ボールシートに印刷や打ち抜き・折り曲げる加工を施して段ボールケースに仕上げます。
まとめ
「段ボールは、段ボールでできている」という言葉は、単なる事実を超えて、持続可能な社会を象徴するメッセージです。
段ボールのリサイクルは、環境保全と経済合理性の両立を可能にする優れた仕組みであり、限りある資源を有効に活用することで、廃棄物の削減やCO₂排出量の抑制にも貢献します。
私たち一人ひとりがこの循環に参加することで、未来の地球を守る力になるのです。日々の分別や回収への協力が、持続可能な社会の実現につながります。